コノサカズキヲ受ケテクレ ドウゾナミナミツガシテオクレ
と俺が言うより早く、君は手酌でサッポロ黒ラベル中瓶をグラスに満たしていたな。節操もなくゴボゴボと蟹泡を立てて。
「ガチョーン!」と乾杯代わりに叫ぶのもすっかり板についたが、俺の送別の辞を遮っておどけてみせたのは別れの哀しみを隠すためだったか。あるいは前夜も午前3時まで歌っていたということだから、宿酔いの思慮を欠いた頭のまま駆けつけたせいだったか。
誰かが(俺?)I井H貴は谷啓に似てると言ったとき、君は一瞬いやな顔をしたものだ。
「いやー、え、えくすきゅーずみぃ。せめてチャーリー・ブラウンと呼んで」とか。
それがどうだ。このごろではメールの末尾も「ガチョーン」で締めているらしいじゃないか。
北都で真のキャラクターに目覚めた君は、次の2年間で画期的な支店経営に乗り出すはずだった。だが「ディープ琴似」の風評が本社の知るところとなっては観念するしかない。
もう津軽海峡の北側で弾けてたようにはいくまいなあ。おりしも首都では、今年は息の長い桜が冷雨に濡れそぼっているという。
やがて散り始めるその花を、いま君はどんな想いで眺めているのだろう。
ハナニアラシノタトエモアルゾ 「サヨナラ」ダケガ人生ダ