“母の日”に比べれば、いまひとつ盛り上がりに欠ける化粧品専門店の“父の日”。
それでもカネボウ・リサージメン、コーセー・ポールスチュアート、資生堂・メンなど、各社“本気商品”の投入でずいぶん活気づいてまいりました。
「いや、まだまだ。『男もすなるすきんけあといふもの…』とかの紀貫之も書いているように(はあ?)、そのむかしは男も白粉を塗り眉を描いていた。アイラインもほほ紅も。したがってクレンジングもしていたわけで、そのあとは当然のことながら洗顔もしていた。いまみたいに便利な泡立てネットがあろうはずもなく、こやって俺みたいに両手で巧みに泡立てて…。作中『あらひがお水やりたれば乳も欲し醍醐の膏(あぶら)塗りつるまえに』とあるのは、洗顔後いきなりクリームをつけるのではなく、その前に化粧水と乳液を忘れずにね、という意味だ」
むかしも男性化粧品があったわけですか?
「そんなものあるわけない。平安時代は男も女も同じ化粧品を使っていた。しかるに無粋で長い武家時代を経て明治大正昭和と下るうち、男の化粧文化はすっかり廃れてしまった。平成もいまごろになってようやく高機能の男性化粧品が出てきたわけだが、まだ手ぬるい」
ダーリーの演説はこのあとも滔々と続き、「暮れ方のまだ陽は高く風碧く北都の小路われを誘いぬ」なんてうそぶきながらぷいと出ていってしまいましたが、要するに専門店たるものいにしえの化粧文化再興を企まずしてどうする。男にも女性化粧品を使わせるべし。来年は“父の日”コーナーに堂々と女性化粧品を展開してはどうか、というものでした。
どうやらダーリーは男性化粧品=ニセモノ、女性化粧品=ホンモノと思っていて、世の男性諸氏にホンモノを奨めるのがわたしたちの次なる使命だ、と言いたいらしいのです(-_-;)